STORY / 01

01こはな工房

紅型作家の千琴さんと知り合ったのは7年くらい前になる。

初めて千琴さんの作品を見たとき正直戸惑った。(今初めて明かすことだけど)
私が知っている紅型の印象は、カラフルな花々や鳥、沖縄の風景を写し取ったようで牧歌的で
自由でそれでいて収まりがいい。

でも彼女の作品は、何というか・・アクが強い。
大胆にイワシの顔だけにフォーカスしたものや、すくっと意志を感じるインコなど
色使いも独特で、「これが紅型?」と思った記憶がある。

この文章を書くにあたって千琴さんにそのことを訊ねたら、
その型は大学時代のものだということだった。

大阪生まれにして沖縄にルーツのある彼女は、
大学を沖縄の工芸染色科で学ぶことになった。

そこで紅型染めに魅せられたものの、
卒業後大阪に戻ってからは道具一式実家に眠らせたままになっていた。

それでも「いつかは紅型をやりたい」という種火は消えることのないまま20年の月日が経った。

その時が来たのは下の子が小学校に上がるとき。
人は「何者か」を持って生まれてくるという。
千琴さんは紛れもなく「紅型作家」として生を受けたんだなあ。

千琴さんの工房・・・
兵庫県の東、川西能勢口から歩いて、
途中に「紅型詣で」(私が勝手に付けました)の階段を登り切った所にあります。
古家を購入して手造りした工房は、
土間があり横に広く、染め物をするのにうってつけの間取りです。

正面奥の大窓のすぐ向こうは山の斜面の石垣で、
雨が降るとその石垣の間の濃い緑の草が、
艶々と深く鈍く光る様子が美しい。

この工房にした古家を買ったときの話や、
ご主人と知り合った時のことが、何よりドラマチックなのだけど、
それは彼女と関係が築けたときに本人に訊ねてみてください。
偶然は必然、なるほどそうなるべきことは、
するっと物事が進むものだなあと、きっとそう思われますよ。

いちりんのスタッフいづみちゃんがつい先日
「イワシのバック」に一目惚れして、今は彼女の通勤着物バックになっている。
今になって実は私もイワシバックが欲しい。
今度こっそり私にも染めてもらおうかと目論んでいる。


【こはな工房 金城千琴】
沖縄で琉球紅型を学んだのち、
兵庫県にて「たからづか紅型」として独創性のある作風を作り続ける。
現在川西市の手造り工房で紅型のみならず、
藍染めにも挑戦し、紅型教室なども開催。
2019年 日本民藝館展 奨励賞受賞

こはな工房のHPはこちら


一覧ページへ戻る